はじめての母乳育児は何かと悩みやトラブルが多いもの。胸に痛みや腫れ、熱感などがあり「授乳の時間が辛い…」「このまま授乳を続けていいのか心配…」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、そうした悩みを少しでも解消できるように、乳腺炎の初期症状や原因、病院を受診するタイミングなどについて紹介します。
また、痛みや腫れがあるときの授乳方法など、乳腺炎に気づいたときの対処法についても紹介しているので、ぜひ、参考にしてみてください。
乳腺炎とは
はじめに、乳腺炎の症状や原因について紹介します。
乳腺炎の種類と症状
乳腺炎とは、母乳のうっ滞や細菌感染などによって乳腺に炎症が起こり、乳房に痛みや腫れ、熱感、インフルエンザ様症状(38.5度以上の発熱や悪寒、頭痛、関節痛)などを伴うものです。
母乳が乳腺内に溜まって(うっ滞して)炎症が起こるものを「うっ滞性乳腺炎」といい、乳房に痛みや腫れ、熱感などの症状が現れます。この状態から乳頭に細菌が入り、乳腺や乳管で感染を起こすと「化膿性乳腺炎」になり、うっ滞性乳腺炎よりも強い症状(乳房の激しい痛みや腫れ、インフルエンザ様症状など)が現れます。
乳腺炎の原因と誘因
乳腺炎の主な原因は「母乳のうっ滞」と「細菌感染」の2つで、乳腺炎の誘因としては下記の要因が報告されています(※)。
・乳頭に損傷がある、特に黄色ブドウ球菌が定着している。
・授乳回数が少ない、回数もしくは授乳時間を決めて授乳する。
・授乳をとばす(授乳間隔をあけてしまう)。
・不適切な吸着や吸啜が弱かったり適切な吸啜運動ができなかったために、乳房から効果的に母乳を飲みとることができない。
・母親または児の病気。
・母乳の過剰分泌状態。
・急に授乳をやめる。
・乳房が圧迫される(きついブラジャー、シートベルトなど)。
・乳頭上の白斑、乳管口や乳管の閉塞:乳疱、水疱、局所的な炎症反応。
・母親のストレスや疲労。
乳腺炎の誘因として、「甘いものや脂っぽいものを食べると乳腺が詰まる」といった話を聞いたことがあるかもしれませんが、特定の食べ物が乳腺炎のリスクになるという医学的根拠はありません。
実際に、私が出産した産院の助産師さんも、「年末年始には乳腺炎の方が増えるが、その理由は会食が多いからではなく、帰省時の移動や来客などで授乳間隔が乱れたり、疲労が蓄積することによるものが多い」とおっしゃっていました。
帰省や旅行時、会食の機会が増える時期には、乳腺炎の誘因として報告されている原因のなかでも、特に、「授乳をとばす(授乳間隔をあけてしまう)」、「母親のストレスや疲労」に気をつけるとよいでしょう。
(※)出典:「乳腺炎ケアガイドライン2020」第2刷(日本助産師会)
初期症状と病院を受診するタイミング
母乳の通り道である乳腺や乳管が閉塞あるいは詰まった状態になると、母乳がうまく流れず、うっ滞性乳腺炎になる可能性があるため、下記のような症状がみられたら早めに対処しましょう。
- 授乳中にチクチクとした痛みがある
乳腺や乳管が詰まり始めると、チクチクとした痛みを引き起こします。はじめは我慢できる痛みでも、そのまま放置しておくと、授乳ができないほどの痛みを伴うことがあります。 - 乳房にしこりや熱感がある
母乳が乳腺内に溜まって炎症が起こると、乳房にしこりや腫れ、熱感などの症状が現れます。さらに症状が悪化すると、痛みや発熱などを伴います。 - 乳頭に白い塊(白斑)や水疱などがある
白斑は母乳の出口を塞いでしまい、母乳が乳腺内に留まる原因になります。また、水泡も放置しておくと乳腺炎の原因になります。
乳腺炎は、初期の段階で適切な対処をすれば早期に改善することが多いといわれています。一方で、対処が遅れて症状が悪化すると、授乳の中止や切開手術が必要になることもあるため、乳腺炎は悪化させないことが大切です。
上記のような症状や「なんとなく乳房全体が赤い」「乳房を押すと軽い痛みがある」などの違和感を感じたら、出産した病院や地域の助産師など、専門の方に早めに相談しましょう。また、初期の段階では、次項で紹介する対処法で改善することも多いため、こちらも参考にしてみてください。
化膿性乳腺炎では、鎮痛薬や抗菌薬などによる治療が必要になるため、化膿性乳腺炎が疑われる症状(38.5度以上の発熱や悪寒、頭痛、関節痛など)がみられる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
乳腺炎に気づいたときの5つの対処法
母乳のうっ滞は、乳腺炎を引き起こす主な原因とされています。そのため、乳腺炎の対処法としては、授乳や搾乳により効果的に母乳を乳房から取り除き、うっ滞を改善することが最も重要だといわれています。
また、痛みや腫れなどの症状があるときは、乳房を冷やしたり、鎮痛薬などを服用することも効果的です。私自身、化膿性乳腺炎になるまで症状を悪化させてしまいましたが、授乳や鎮痛薬の服用などによって症状が改善しました。
下記に、日本助産師会が発表した「乳腺炎ケアガイドライン2020」第2刷と自分自身の経験を踏まえて、乳腺炎に効果的な対処法を5つ紹介します。
1.授乳
乳腺炎になった母乳を赤ちゃんにあげても大丈夫なのか?不安に思うかもしれません。しかし、乳腺炎発症下で授乳を継続した210例のうち、赤ちゃんに有害な影響が認められた症例が1例もないという研究報告から、WHOは「たとえ黄色ブドウ球菌が確認されていたとしても、授乳継続は一般的に安全である」として授乳の継続を推奨しています(※)。
授乳の中止は、かえって乳腺炎の症状を悪化させる危険が生じるといわれているため、可能な限り授乳を継続するようにしましょう。痛みや腫れなどの症状があるときの授乳方法については、下記にまとめています。
・これまで以上に頻繁に、最初に患側(症状のある側)の乳房から授乳する。
・痛みにより射乳反射が起こりにくいときは、健側(症状のない側)の乳房から授乳を始め、射乳反射が起こったらすぐに患側の乳房に切り替えるようにする。
・母乳の流れを改善するために、閉塞部位(閉塞や詰まりのある部分)に赤ちゃんの顎がくるような授乳姿勢をとる。
・母乳の流れを促すために、授乳中に閉塞部位から乳頭に向かって強い圧力をかけないようにする。マッサージする場合は、過度な圧力は加えず、緩やかに行う。
・患側の乳房を圧迫する姿勢を避ける。
(※)参考:「Mastitis : causes and management」2000(World Health Organization)
2.搾乳
日本助産師会と日本助産学会は、授乳が不十分もしくはできない場合の対処法として、搾乳を推奨しています。ただし、乳腺炎は炎症性の疾患なので、閉塞部位(閉塞や詰まりのある部分)の安静を保つことを優先し、過度な圧力は加えないようする必要があります。
痛みや腫れなどの症状があるときの搾乳方法については、下記にまとめています。
・搾乳する前に、手をよく洗う。
・乳房に痛みを感じないように圧力を調整して、手による搾乳を行う。
・手による搾乳が難しい場合は、圧力調整ができる搾乳器を使用し、最も低い吸引圧から搾乳を開始する。痛みを感じる場合は使用を中止する。
・射乳反射が起こりにくいときは、健側(症状のない側)の乳房から搾乳し、射乳反射が起こったらすぐに患側(症状のある側)の乳房の搾乳を行う。あるいは、左右同時に搾乳を行う。
・健側の乳房からの搾母乳は、通常の保存方法後、赤ちゃんに飲ませることができる。患側から膿が混入した搾母乳は、赤ちゃんの状態によっては禁忌となる場合があるので、小児科医に相談する。
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3.冷温湿布
授乳や搾乳を試みても母乳の分泌がみられない場合は、授乳(搾乳)直前または授乳(搾乳)中に、温湿布や蒸しタオルで背中や肩、乳房を温めることも効果的です。ただし、痛みや腫れがひどいときは控えたほうがいい場合もあるため、主治医や助産師などに相談しましょう。
痛みや熱感がある場合は、患側(症状のある側)の乳房に冷湿布をすることで症状が和らぐ可能性もあります。ただし、氷などで急激に冷やすと、かえって母乳が出づらくなるため、保冷剤を使用する場合はタオルやガーゼなどで包んだものを肌にあてるようにしましょう。
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乳頭の痛みや熱感が長く続く場合は、乳頭に傷や亀裂などができていることがあります。このようなときは、ジェルパッドなどで乳頭の熱を吸収するとともに、常に潤った状態を保ち、また、余計な摩擦から防ぐことで、傷や亀裂が早く治るといわれています。水分をたっぷりと含んだメデラのハイドロジェルパッドは、違和感や不快感のある乳首を保護しながら潤し、新しい皮膚の形成を助けます。少量の母乳であれば吸収して内部に閉じ込めることができるため、母乳が漏れても安心です。
4.薬物療法
痛みがひどいときは、射乳反射が起こりにくくなるため、鎮痛薬の服用が勧められています。授乳中に薬を服用しても大丈夫なのか?不安に思うかもしれませんが、ほとんどの鎮痛薬は母乳移行性が非常に少ないため、授乳中も安全に使用することができます。
ただし、アセトアミノフェン(カロナール、ピリナジンなど)は抗炎症作用が弱いため、炎症症状を軽減するためには、イブプロフェン(ブルフェン)やロキソプロフェン(ロキソニン)、ジクロフェナク(ボルタレン)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が効果的です。
授乳を継続しても12〜24時間以内に症状が改善しない、あるいは急激に症状が悪化した場合は、化膿性乳腺炎の可能性があるため、抗菌薬の服用が勧められています。鎮痛薬同様に、授乳中も安全に使用できる薬剤があるため、抗菌薬を服用していても授乳を継続することはできます。
また、市販薬は、幅広い症状に対応するため複数の成分が含まれるものも多いため、授乳中は医療機関で処方してもらうのが安心です。
5.休息
母親のストレスや疲労は、乳腺炎を引き起こす誘因とされています。早期に症状を改善するためには、これまで以上に頻繁に授乳しつつも、身体はしっかりと休めることが重要です。
乳腺炎の症状が悪化すると、思うように授乳ができなくなり、心身ともに大きな負担がかかります。そのため、初期症状がみられたら、家事は家族に任せて早めに休息を取るようにしましょう。
家族の助けを得るのが難しい場合は、自治体が提供している公的支援や、食事宅配などの民間サービスを活用するのもおすすめです。
母乳育児の悩みやトラブルは、一人で抱え込まないことが重要です。乳房に違和感を感じたり、授乳にトラブルがあれば、地域の助産師などに相談するようにしましょう。
自宅でできる乳腺炎の5つの予防法
乳腺炎の主な原因は「母乳のうっ滞」と「細菌感染」の2つです。そのため、乳腺炎の予防としては、母乳のうっ滞と細菌感染を引き起こす誘因を取り除くことが最も重要だといわれています。
下記に、自分自身の経験も踏まえて、乳腺炎の発症・再発防止に効果的な予防法を5つ紹介します。
1.正しい抱き方・含ませ方
正しい抱き方や含ませ方をしっかり覚えることは、乳頭痛や乳頭損傷の予防に効果があるといわれています。また、赤ちゃんがしっかりと母乳を飲み取れるようになれば、母乳のうっ滞を改善することにもつながります。
まずは、正しい抱き方になっているかどうか?以下を確認してみましょう。
・赤ちゃんの頭と体(首・肩・腰)が一直線になっている。
・赤ちゃんの体全体が、お母さんの方を向いている。
・赤ちゃんの鼻が、お母さんの乳頭と向き合っている(高さがあっていない場合は、クッションなどを利用するとよい)。
・赤ちゃんの体が、お母さんの体に密着している。
・お母さんが前かがみになり、乳房で赤ちゃんの顔を覆い隠していない。
いつも同じ抱き方で授乳していると、同じ場所(乳腺)の母乳ばかり飲むことになり、母乳の飲み方に偏り(母乳の飲み残し)が発生し、母乳がうっ滞しやすくなります。そのため、横抱きだけでなく、縦抱きやフットボール抱きなど、色々な抱き方で授乳することもおすすめです。
また、赤ちゃんの口に含ませるときは、乳輪全体が隠れるくらい、深く含ませるようにしましょう。浅い含ませ方の場合、乳首の先端だけを引っ張って飲んでしまい、乳頭痛や乳頭損傷につながります。
万が一、乳頭に傷ができてしまった場合は、細菌感染を防ぐため乳頭の周りを清潔に保つようにしましょう。母乳パッドなどを使用している方は、授乳のたびに交換すると安心です。
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乳頭の傷は湿った状態の方が治りが早いため、万が一、乳頭に傷ができてしまった場合は、精製ラノリンやジェルパッドなどを使用するのがおすすめです。
メデラのピュアレーンは、欧州薬局方(EP)および米国薬局方(USP)基準の必要条件を満たしたメディカルグレードの高精製ラノリンを使用した、100%天然成分の乳頭用クリームです。添加物や保存料を一切使用していないので、授乳前にクリームを拭き取る必要がありません。また、唇や鼻の下など、赤ちゃんの乾燥した肌に使用することもできます。
水分をたっぷりと含んだメデラのハイドロジェルパッドは、違和感や不快感のある乳首を保護しながら潤し、新しい皮膚の形成を助けます。少量の母乳であれば吸収して内部に閉じ込めることができるため、母乳が漏れても安心です。
2.乳房マッサージ
乳房マッサージには、乳房周辺の血流を促すことで、母乳のうっ滞を改善し、乳輪や乳頭を柔らかくする効果があるといわれています。乳輪や乳頭が硬くなっていると、乳頭のトラブルが起こりやすくなるため、授乳前に乳房マッサージを行うとよいでしょう。
ただし、乳腺炎は炎症性の疾患なので、過度な圧力は加えないようする必要があります。痛みや腫れなどの症状がある場合は、自己流の乳房マッサージは行わず、出産した病院や地域の助産師など、専門の方に相談するのが安心です。
3.冷え対策
母乳は母親の血液から作られるため、体が冷えて血流が悪くなると、母乳の分泌不足や質の低下など、乳腺炎につながるトラブルを引き起こします。また、体が冷えることで乳頭が硬くなり、乳頭のトラブルも起こりやすくなるといわれています。
女性は身体の構造上、男性よりも冷えやすく、生活習慣の改善だけで冷えを克服するのは難しい場合もあるため、体の巡りを改善するハーブティーなどを取り入れるのもおすすめです。
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4.適切なサイズの下着・洋服
締め付けのきついブラジャーなどで乳房が圧迫されると、乳房周辺の血流が悪くなり、母乳のうっ滞が起こりやすくなります。特に、ワイヤー入りのブラジャーは締め付けがきつくなりやすいため、授乳期は乳房を圧迫しすぎないブラジャーを選ぶようにしましょう。
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5.十分な休息
ストレスや疲労が溜まると、血流が悪くなり、母乳のうっ滞が起こりやすくなります。一方で、授乳中は、夜間の授乳などによる睡眠不足でストレスや疲労が溜まりやすいため、積極的に休息を取るようにしましょう。
限られた時間の中ですべてを完璧にこなすのは難しいため、家事を楽にする便利なアイテムやサービスを取り入れることもおすすめです。掃除や洗濯など家事の時短アイデアとおすすめのアイテムやサービスについては、下記の記事で紹介しているので、参考にしてみてください。